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目的

シリコンダイオード(Si)とゲルマニウムダイオード(Ge)の基本特性であるV-I特性と整流特性について、実験を通して両者の違いを調べる。

実験原理

ダイオードのV-I特性

ダイオードは、アノード(陽極)からカソード(陰極)の方向にのみ電流を流す性質を持つ半導体素子である。順方向(アノード→カソード)に電圧を印加した場合、ある電圧(閾値電圧)を超えると急激に電流が流れ始める。一方、逆方向(カソード→アノード)に電圧を印加した場合は、ごくわずかな漏れ電流(飽和電流)しか流れない。

ダイオードに加わる電圧 VV と流れる順方向電流 II の関係は、次式で近似される。

I=IS(eqVnkT1)I = I_S \left( e^{\frac{qV}{nkT}} - 1 \right)

ここで、ISI_S は飽和電流、qq は電子の電荷、kk はボルツマン定数、TT は絶対温度、nn は理想係数である。シリコンとゲルマニウムではバンドギャップエネルギーが異なるため、閾値電圧や順方向特性に違いが生じる。

整流回路

ダイオードの一方向性を利用して、交流(AC)を直流(DC)に変換することができる。半波整流回路では、入力された正弦波交流の正の半周期のみが出力に現れる。平滑用コンデンサを負荷と並列に接続することで、出力波形をより直流に近い形に平滑化できる。

使用機器

  1. 直流電流計
  2. 直流電圧計
  3. 直流安定化電源
  4. オシロスコープ(Tektronix TDS2002B)
  5. 発振器(ファンクションジェネレータ)
  6. ダイオード
    • シリコンダイオード(Si)
    • ゲルマニウムダイオード(Ge)
  7. 保護抵抗 RR = 1 kΩ
  8. 負荷抵抗 RLR_L = 20 kΩ / 200 Ω
  9. コンデンサ CC = 0.1 μF / 0.33 μF

実験方法

実験Ⅰ:V-I特性の測定

順方向特性

Fig. 1 の回路(順方向接続)を組み、電源電圧 EE を 0 V から徐々に上昇させながら、ダイオードの順方向電圧 VV と順方向電流 II の関係を測定した。電流の最大値は 15 mA 程度とし、電流変化の大きい箇所は測定ポイントを細かくした。Si ダイオードと Ge ダイオードの両方について測定を行った。

逆方向特性

ダイオードを逆方向に接続し(Fig. 2)、逆方向電圧 VV に対する逆方向電流 II を測定した(電圧は最大 10 V まで)。

V-I特性測定回路(順方向)

V-I特性測定回路(逆方向)

実験Ⅱ:整流波形の観測

Fig. 3 の半波整流回路を組み、発振器から 1 kHz、振幅 2 Vpp の正弦波を入力した。オシロスコープで入力波形 VinV_{in} と出力波形 VoutV_{out} を観測し、入出力電圧の最大電圧差をカーソル機能を用いて測定した。

負荷抵抗 RLR_L は 20 kΩ と 200 Ω の両方について測定した。さらに、平滑用コンデンサ CC(0.1 μF と 0.33 μF)を負荷抵抗 RLR_L = 20 kΩ と並列に接続した場合の出力波形も観測した。これらの測定を Si ダイオードと Ge ダイオードの両方について行った。

整流回路

実験結果

実験Ⅰ:V-I特性

順方向特性

Table 1 に Si ダイオードの粗測定値、Table 2 に微細測定値、Table 3 に Ge ダイオードの順方向 V-I 特性の測定値を示す。

Table 1: Si ダイオード 順方向 V-I 特性(粗測定)

設定電圧 V(In) [V]実測電圧 V(Act) [V]電流 I [mA]
1.00.5630.45
2.00.6161.40
3.00.6412.38
4.00.6583.37
5.00.6714.36
6.00.6805.36
7.00.6896.36
8.00.6977.36
9.00.7038.37
10.00.7099.37

Table 2: Si ダイオード 順方向 V-I 特性(微細測定)

設定電圧 V(In) [V]実測電圧 V(Act) [V]電流 I [mA]
0.10.10000.00001
0.20.19930.00023
0.30.29780.00171
0.40.38800.01070
0.50.45200.04210
0.60.49200.09780
0.70.51700.16693
0.80.53400.24274
0.90.54700.32279
1.00.55800.40481
2.00.61201.27690
3.00.63702.17490
4.00.65403.08125
5.00.66703.99158
6.00.67704.90466
7.00.69006.34380
8.00.69707.34480
9.00.70408.34780
10.00.71009.35300

Table 3: Ge ダイオード 順方向 V-I 特性

設定電圧 V(In) [V]実測電圧 V(Act) [V]電流 I [mA]
0.10.09200.010
0.20.14310.060
0.30.19580.130
0.40.20780.200
0.50.23340.270
0.60.25660.350
0.70.27840.430
0.80.29910.510
0.90.31880.590
1.00.33700.670
2.00.50401.510
3.00.65302.360
4.00.79103.230
5.00.92204.110
6.01.04704.990
7.01.16905.880
8.01.28706.770
9.01.40107.660
10.01.51208.560

Table 4: Si ダイオード 逆方向 V-I 特性

設定電圧 V(In) [V]実測電圧 V(Act) [V]電流 I [μA]
1.00.9960.080
2.01.9940.170
3.02.9920.260
4.03.9890.360
5.04.9800.490
6.05.9800.600
7.06.9700.680
8.07.9700.780
9.08.9700.890
10.09.9600.990

Table 5: Ge ダイオード 逆方向 V-I 特性

設定電圧 V(In) [V]実測電圧 V(Act) [V]電流 I [μA]
1.01.0042.220
2.02.0012.650
3.02.9983.650
4.03.9954.330
5.04.9905.050
6.05.9805.730
7.06.9806.430
8.07.9807.150
9.08.9708.000
10.09.9708.800

V-I特性グラフ

順方向V-I特性(線形表示)

順方向V-I特性(半対数表示)

逆方向V-I特性

Si と Ge の立ち上がり電圧比較

実験Ⅱ:整流波形

Table 6 に実験Ⅱの測定結果を示す。なお、オシロスコープ波形画像は TEK0000〜TEK0025 のファイルとして保存しており、オシロ画像対応表(別添)を参照のこと。

Table 6: 整流波形観測結果(入出力電圧差)

ダイオード負荷抵抗 RLR_L平滑コンデンサ CC入出力最大電圧差
Si20 kΩなし
Si200 Ωなし
Ge20 kΩなし
Ge200 Ωなし
Si20 kΩ0.1 μF
Si20 kΩ0.33 μF
Ge20 kΩ0.1 μF
Ge20 kΩ0.33 μF

※ 入出力最大電圧差はオシロスコープのカーソル機能により測定した値である。

整流波形画像

以下にオシロスコープで観測した波形画像を示す。ファイル名と測定条件の対応は「B2オシロ画像対応表.jpg」を参照のこと。

(整流波形画像は TEK0000.png 〜 TEK0025.png として保存)

考察

(1) Si ダイオードと Ge ダイオードの特性の違い

実験Ⅰの結果より、以下のような違いが確認された。

閾値電圧(立ち上がり電圧): Si ダイオードの順方向閾値電圧は約 0.6 V であるのに対し、Ge ダイオードの閾値電圧は約 0.3 V と低い値であった。これは、Si のバンドギャップエネルギーが約 1.12 eV であるのに対し、Ge のバンドギャップエネルギーが約 0.67 eV と小さいことに起因する。バンドギャップが小さいほど、より低い電圧でキャリアの伝導が始まるため、Ge の閾値電圧が低くなる。

順方向電流の増加率: 半対数グラフより、Si と Ge では立ち上がり後の電流増加の傾きが異なる。Si は V(Act) = 0.5 V で I = 0.042 mA、0.6 V で 0.098 mA と緩やかに増加するのに対し、Ge は V(Act) = 0.2 V で I = 0.06 mA、0.3 V で 0.13 mA とより急峻に増加する。これは理想係数 nn や飽和電流 ISI_S の違いによるものである。

逆方向漏れ電流: 逆方向電圧 10 V 印加時、Si ダイオードの逆方向電流は 0.99 μA であったのに対し、Ge ダイオードでは 8.80 μA と約 9 倍大きい値を示した。これは Ge のバンドギャップが小さいため、熱励起による少数キャリアの生成がより顕著であるためである。

(2) Si ダイオードの立ち上がり電圧

順方向 V-I 特性グラフ(Table 2)より、Si ダイオードにおいて電流が急激に増加し始める電圧(閾値電圧)は約 0.6 V である。Table 2 の微細測定データでは、V(Act) = 0.547 V で I = 0.32 mA、V(Act) = 0.558 V で I = 0.40 mA であり、0.58 V 付近から電流が 0.4 mA を超え始め、0.6 V 以上で急激な増加が確認できる。粗測定(Table 1)では V(In) = 1.0 V で V(Act) = 0.563 V、I = 0.45 mA であり、同様の傾向が確認できる。

(3) 出力電圧の最大値の違い(Si と Ge)

実験Ⅱの結果より、Si ダイオードと Ge ダイオードでは、整流後の出力電圧の最大値に違いが見られる。Ge ダイオードの方が Si ダイオードよりも出力電圧の最大値が大きくなる。

これは、順方向電圧降下 VFV_F の違いに起因する。ダイオードの順方向電圧降下は Si で約 0.6〜0.7 V、Ge で約 0.2〜0.3 V である。半波整流回路では、入力電圧からこの VFV_F を差し引いた値が出力電圧となるため、VFV_F の小さい Ge の方が出力電圧が大きくなる。

※ 本実験ではオシロスコープのカーソル測定値(Table 6)が未記入のため、以下は理論値による考察である。実測値が得られ次第、実際の出力電圧と比較する予定である。

参考値として、実験手順書に示された典型的な値では、RLR_L = 20 kΩ(負荷電流 ILI_L = 0.1 mA)の条件で、Si の VFV_F は約 0.56 V、Ge の VFV_F は約 0.24 V であり、RLR_L = 200 Ω(ILI_L = 10 mA)では Si の VFV_F は約 0.72 V、Ge の VFV_F は約 0.92 V と報告されている。

(4) 平滑コンデンサの容量と波形

平滑用コンデンサ CC の容量を大きくすると、以下の効果が得られる。

  • リプルの低減: コンデンサ容量が大きいほど、放電時定数 τ = RLR_L × C が大きくなり、コンデンサの放電が緩やかになる。これにより、出力波形のリプル(変動)が小さくなり、より直流に近い波形が得られる。
  • 出力電圧の維持: 容量が大きいほど、ダイオードがオフしている期間の電圧降下が小さくなり、平均出力電圧が高く維持される。

実験では、0.1 μF と 0.33 μF のコンデンサを用いて比較した。負荷抵抗 RLR_L = 20 kΩ の場合、時定数はそれぞれ τ = 20 kΩ × 0.1 μF = 2 ms、τ = 20 kΩ × 0.33 μF = 6.6 ms となり、0.33 μF の方が時定数が 3.3 倍大きい。入力周波数 1 kHz(周期 1 ms)に対して、時定数が周期より十分大きいため、コンデンサの放電が緩やかになり、リプルが低減されると考えられる。

※ 本実験ではオシロスコープの波形観測結果(Table 6)が未記入のため、以下は理論値による考察である。実測値が得られ次第、実際の波形と比較する予定である。ただし、あまりに容量を大きくすると、ダイオードに流れる充電電流のピーク値が大きくなり、ダイオードや電源に負荷がかかる可能性があるため、適切な容量の選択が重要である。

結論

本実験では、シリコンダイオード(Si)とゲルマニウムダイオード(Ge)の V-I 特性および整流特性を測定し、以下の結論を得た。

  1. Si ダイオードの閾値電圧は約 0.6 V、Ge ダイオードの閾値電圧は約 0.3 V であり、Ge の方が低い電圧で導通し始める。これはバンドギャップエネルギーの違いによる。

  2. 逆方向漏れ電流は、Si に比べて Ge の方が約 9 倍大きく、Ge ダイオードの方が熱的に不安定であることを示している。

  3. 整流特性において、Ge ダイオードの方が順方向電圧降下が小さいため、出力電圧の最大値が大きくなる。ただし、Ge は熱的特性で劣るため、用途に応じた適切な材料選択が必要である。(※ 整流波形の実測値は未記入)

  4. 平滑コンデンサの容量を大きくすることで、出力波形のリプルを低減でき、より安定した直流電圧を得られることが理論的に確認された。(※ 整流波形の実測値は未記入)

以上より、Si と Ge ダイオードは材料物性に基づいた明確な特性の違いを有しており、それぞれの特徴を理解した上で回路設計に活用することが重要である。

参考

  1. 東北ポリテクニックカレッジ, 「B1. ダイオードの特性」実験手順書, R8年度
  2. S. M. Sze, "Physics of Semiconductor Devices", 3rd Edition, Wiley-Interscience, 2006
  3. A. S. Sedra, K. C. Smith, "Microelectronic Circuits", 8th Edition, Oxford University Press, 2020